エッセイ:旅先には、困っていると必ず助けてくれる神様がいる

母すみれです。

旅をしていると、行く先々で困った時に助けてくださる神様のような方によく出会います。

それはもちろん、たまたま親切な方々に出会ったという運の良さもあるでしょうが、何度も娘みずきとの旅を繰り返すうちに、これは偶然だけではないのかも、と感じてきたものです。

そんなことについて、少しお話したいと思います。

モスクワ音楽院のカッサ(チケット売り場)にて

例えばモスクワ音楽院のカッサで、学生オケの定期演奏会のチケットを買おうとした時のこと。

カッサのブースの中にいる係員の女性に、ロシア語を話せないみずきは、しかたなく英語で

「Can we buy the tickets for the regular concert?」と尋ねましたが、帰ってきた言葉は案の定、

「%&@@#+\?」

すみません、ロシア語話せませ~ん(涙)

これは手ごわい。筆談とボディランゲージで何とか伝えなくては!とみずきがまさに戦闘モードに入ったところに、

「Can I help you?」

爽やかなバリトンの声が。

はっと振り返ると、そこにはその声にふさわしい、30代とおぼしき素敵なジャケット姿の青年が。」

おおお~っ!ここにも神様がいました。

ここからは日本語訳で。笑

みずき「定期演奏会のチケットを買いたいのですが、ロシア語が話せないので…」

青年「では、僕が通訳しますよ。2枚ですね。どの辺の席がいいですか?このエリアは○○ルーブル、こっちが××ルーブル…はい、2枚で500ルーブルですね。」

無事に楽してチケットを手に入れることができました。

その後は娘みずきと爽やかなロシア青年のしばしの道ばた歓談。

娘「ありがとうございました。とても助かりました。

でも、ロシアの方は、あまり英語を話さない方が多いのに、あなたはどうしてそんなに流暢でいらっしゃるのですか?」

青「英語圏に出張のある仕事をしているからですよ」

娘「国際的にビジネスをしていらっしゃるのですね。素敵ですね!」

青「どちらからいらっしゃいましたか?」

娘「日本の東京です。」

青「ロシアはいかがですか?」

娘「ロシアは、美しい建物も多いし、芸術も豊かですね。大好きになりました。」

・・・・・・・・・

(とても楽しそうです。流暢に英語を話せない母、そばで聞きながらニコニコしてるだけ。。。)

娘よ、それにしても、ここでも困った時に素敵な神様が現れたね!

3つの「す」

そういえば、みずきは大学時代に、CAになるための予備校のようなものに半年ほど通いましたが、彼女曰く、そこで初めに先生に叩き込まれた、「関係を良くしたい人とと話す時に使いたい、簡単な『3ワード』」はとても実践的で役に立つ、とのこと。

その3ワードとは、3つの「す」のつく言葉で、

「すごい!」「すてき!」「すばらしい!」だそうです。

おべんちゃらでなく、本当にそう思った時に、素直にこの3つの「す」を口に出すことによって、尊敬が伝わる。感謝を伝えるのにも、関係を円滑にするのにも役立つ。

まあ、これは象徴であって、本当にこればかり言っていたら、馬鹿に見えてしまうでしょう。

でも、みずきといると、本当に感謝と感激を伝えるのがうまいなあ、と思うことが多いのです。

それが、困った時に神様を引き寄せるのかな、と傍から見ている母は思うのです。

観察していると、その「感謝・感激の表し方」にも、たくさんのヴァリエーションがあるようです。

感謝・感激の表現のヴァリエーション

この旅行中にも、サンクトペテルブルクで、宿の人がいなくて入れなかった時、心配して助けてくださったタクシーの運転手さんに、自然に、ありがとうのハグをしていましたし。

(人と場合を選んでね!)

以前、イタリアのヴェニスで真夜中の散歩中、真っ暗になった道で迷って困った時に、地元のスレンダーな美しいマダムに道を教えていただいたどころか、一緒に長い時間歩いて、夜の観光案内までしていただいたことがあります。

その時も、「あなたは、いつも旅の人にそんなに親切にしていらっしゃるのですか?」とキラキラな目を向けて尋ねていました。

素敵なマダムは言ったものです。

「いつも旅の人を助けてるわけではないわ。でも、あなたが他の人に道を尋ねている姿を見たときから、私があなたを助けたいな、とあなたに思わされたのよ。あなたが私をこうさせたのよ。」とニッコリされました。

フランスのパリで地図を片手に道に迷った時は、こちらを見ていた大柄なマダムが英語で

「あなたたち、どこに行きたいの?」と尋ねるので、みずきが

「リュクサンブール公園です。ご存知ですか?」と答えると、

「あら、どっちかしら?iphoneで調べるわ。」

(やり取りの中で、あまりにも自然な英語なので)

娘「英語がお上手なんですね!」

マ「当たり前よ。アメリカ人だもの!でもあなたを助けたいと思ったのよ。」

マドリッドのお巡りさん、ありがとう。

極めつけは、スペインのマドリッドでスリにカードの入ったお財布ごと盗まれてしまった時のこと。これは、私との旅ではなく、みずきの単独世界一周旅中の出来事です。

日本の土曜日の夜中に国際電話で起こされて、「ママ、お財布すられちゃった!カードも何枚か入ってるから、すぐにカード会社に電話かけて、カードが使われないように止めて、どうしたら再発行してもらえるか聞いて!」

と娘が半泣き状態で頼んできました。

私「こちらでできることはやるけど、そっちの警察に盗難届けを出したほうがいいわよ。」

娘「わかった~…」

仕方なく、警察に行って盗難届けを出したとき、マドリッドの警察官には英語のできる方が少ないのですが、英語のできる若い男性警察官が担当についてくれたので、わけを話すと、

警「土日はカードが再発行されないんだね。それでは週末困るでしょう。私の実家に頼んであげるから泊まりなさい」と、安心できるように他の警察官の方にも事の次第を言ってくださり、自分は独立して職場に近いアパートに住んでいるのにもかかわらずご実家に頼んでくださって、週末の間泊めていただいたことがあります。それどころか、一日休暇を使ってマドリッドを案内までしてくださったそうです。

(もしかしたら日本では、職務何とかに抵触するとかで、ありえないことかも知れませんが。お国柄でしょうか。)

その話を聞いたときは、さすがにびっくりして、

「それって親切だけど、もしかして下心じゃないの??!」と詰め寄ってしまいましたが、

「断じてそれはないよ!周りの人、みんな警察官なんだよ? それに性善説をそのまま信じるほど無邪気ではないから、心配しないで大丈夫だよ。本当にとても親切なお巡りさんとご家族なの」

そうは言ってもそりゃ心配しますよね。。

その1年後、その時のお巡りさんが逆に日本に観光にいらっしゃって(もともと日本びいきだそうです)、みずきが東京案内をし、郊外の我が家にも遊びに来てくださいましたが、「下心?断じてそれはない!」と言ったみずきの言葉通り、ラテン系らしく陽気で明るいけれど、誠実な方でした。

お別れの時に、私は「娘に親切にしてくださってありがとう」と心からお礼を言いました。

彼はみずきに、「君のママにハグをしていいかな?」と恥ずかしそうに聞いてから、優しくハグをしてくれました。

そんなふうに、枚挙にいとまがないくらい、周りの皆さんに助けていただくことが多いのです。

「あなたは良い人」ビーム!を出してる。

断っておきますが、みずきは世界一周一人旅を企てるくらい破天荒というか笑、自立はしていますが、特別な美人というわけではありませんし、バリバリのやり手なわけでもありません。むしろ家庭生活では、いろいろとダメダメなことも多いです(断言)。

でも、いろいろな経験をして大人になった娘と旅をしてみると、やっぱり旅は人を成長させるんだなあと改めて思います。

彼女は外から見て、「助けてあげたら自分が良い人間だと思わせてくれそうな人」オーラが出ているのかな、と一緒にいて感じています。性善説をそのまま信じてはいないにしても、親切にしてやったら自分が幸せになりそうだ、と思わせる、「あなたは良い人」ビームを発している。

彼女は、一人旅が長かったのですが、一人旅というのはいつも一人でいるわけではなく、安全のためにも、その土地ごとに、必ず行動を共にする良い連れを探すことが大切なのだそうです。

だから、ホステルなどではかえって複数人の相部屋がよく、いろいろな国からきた旅人たちと楽しく情報交換をしながら、相手を見定める(相手からも見定められる)。

人を見る目を養い、情けは人の為ならず、旅人同士、近くで困った人を見た時にはできるだけ助けてあげる。それが自分も助けてもらうコツ!、と話しておりました。

いつも感謝と感動をきちんと表情と言葉で表すこと、人の善意(しかし時には悪意)を敏感に感じるアンテナを張っておくこと。それは力の弱い女子として、長く旅をしていくうちに、身を守りながら人とかかわり、助けてもらえるように自然に身に着けた技術と戦略かもしれません。

それが神様を引き寄せるのかな、と。

私はいつも、傍らでそれにあやかっています。役得です。

そして、私もホームグラウンドである日本に帰ったら、今度は自分が困っている旅の人の助けになろうと思い、毎年4月になると、「基礎英語」と「英語会話」のテキストを買うのです。

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